雑念日記

愛する本たちとともに送る、雑念だらけの日々。
文学・小説を中心にした簡単なレビュー。(最近面倒なので更新は程ほどに)

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『自由死刑』 島田雅彦

自由死刑
自由死刑
島田 雅彦

自由死刑=自殺みたいなものですね。この話は一週間後に自殺をすることに決めた男性が送る一週間の話です。

よくよく考えると、死ぬと決めてから本当に死ぬまでの小説って何かあるだろうか、と思うと、僕の読んでる量が追いついていないからかもしれませんが、他に思い当たるものがない。そこらへんのことを逐一、いかにも人が自殺しようと考えた時にやりそうなことを、逐一記述してあります。

で、結構『アルマジロ王』におさめられている短編とシンクロするところがあったり、純粋にそこから派生した感じのストーリーだったりもします。

誰かが死ぬことに決めたとき、それはどちらかというと衝動的で悲壮感の漂うものを想像してしまいますが、そういう印象は受けません。だからといって、それが悪いとかそういうことではなく、むしろここでいう自殺は自由な死刑であるからか、どこかしら楽観的で痛みのないものに感じます。

そのためか、最後の章であるSOMEDAYで主人公はようやくその自由死刑に課せられた自由の重みのようなものに追い立てられているようでもあります。自由って大変だな。
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『封建主義者かく語りき』 呉智英

封建主義者かく語りき
封建主義者かく語りき
呉 智英

非常に面白く読めました。

著者は自らを封建主義者であるとして、現代の民主主義を中心とした批判を繰り広げています。特に、民主主義にこそファシズムを生み出す土壌がある、とするお話。教会やギルドを中心としたコミュニティといった下支えを失うことで、人々のアイデンティティが揺らいでしまった。そこで誕生したのが「マス」と呼ばれる大衆という概念。良い時は良いのだが、ひとたび社会的不安が生じることによって、そのような溶解されてしまった人々はどこかに救いを求めようとする。それが強い政治、それを行う指導者であった。みたいな話がありました。(多少僕が余計なことを言っているかもしれません)うーん、納得。

個人的にはこの本を読んで、一度政治的なイズムについて、一通りきちんと把握しておく必要があると思い、今週末からそのあたりの本を読んでみようと思ってます。

それ以上に気になったのは、「明治維新を疑え」という最終章です。これは中身がどうこうということではなく、きっと個人的にもそのあたりの時代について、最近考えているところがあったからではないかと思います。

どういうことが気になっていたかというと、これは日本文学についてのことですが、近代文学と呼ばれるものが(どうやら聞いたり、読んだりしたところでは)、西欧からの輸入で始まったものらしいということです。そうなると、この百年ばかり、常に西欧の模倣を繰り返しているわけであります。では、新しい日本文学はいかにして生まれるのか。恐らくこれはそのような舶来物とは違った視点に立脚したところから誕生する可能性がある。なんとなく、そんなことを考えていたので、この章のタイトルが妙にひっかかりました。

とりあえず、ここらへんのことはこれからも考えていこうと思ってます。
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『城』その2 カフカ

城

フランツ カフカ

カフカの『城』について第二回目です。

前回につづいてですが、今回は城とはなにものだという話をわからなかったなりに一応書いておこうと思います。かなり個人的な記録的要素が強いので、気が向いたら読んでみてください。

まず気になったことは、Kが結局城を見ることも、そこへ行き着くことすらできないという事実です。で、結局すべて村の人たちによる聞き伝えでしかその内情を知ることはできないというわけです。もちろん、そこには多くの作り話や誇張が含まれるものと考えられます。

とすれば、カフカは城について何を書こうとしたのでしょうか。Kという一人の人間が外部によって振り回され、なんらかの抑圧をうける、それを授ける一つの象徴として城が存在する、そういう考え方はもちろんあるでしょう。

だけど、あまりそういうことは気にならなかった。城そのものというよりは、城を対象にしたエピソードが形成される様が僕としては面白かったです。さっきも触れたことですが、城に関する情報が基本的には村人の話として形成される点がです。そして、どうやらその筋のようなものが、ある程度村人の間で共通の認識として存在しているらしい。けれども当の村人でさえ、聞いた話だったりする。

どことなく、不確かな情報で城というものが意識の中に形成される、その構造が伝承的です。それ故、村人の意識の中で城という存在は実体よりも肥大化してしまっているのではないかと思えてしまう。城がある意味で神話化されるといってよいのではないか、そう思います。

そのような神話によって、この城は村の統治を容易にしているのかもしれません。

けれども(昨日の話に少し戻るなら)異邦人であるKにはそんな神話が存在しません。ということは、ある意味でKという人物は城の本性を引き出しうる唯一の人物。(なんとなく思いついたことだったけど、やっぱりだからこそ彼は測量士なんじゃないの、これって実は)けれどもそううまくいかないのですね、残念ながら。(女の子に手を出したりするから)

結局城が何なのかはよくわかりませんでした。とりあえず思いついたことを書き連ねて記録ということで。
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『城』 カフカ

城

フランツ カフカ

フランツ・カフカの『城』です。読み終えるのに非常に時間がかかりました。

測量士のKは深い雪の中ある村に到着するものの、そこに測量士としての仕事はありません。そこで、彼を呼びつけた城に対してあらゆる方法で接触を試みます。まあ結局どれもうまくはいかないのですが。

この作品で気になったのは、村の人たちと測量士Kの話があまりにもかみ合わないところです。Kの発言はあらゆる場面で、村の人(それも特に女性が多い気がします)から非難を受けます。

そこが面白い。村の人とその外部から来た人の間に共有されている感覚がない。それ故、会話がなりたたない。お互いの話の中にお互いが本来感じるべきリアリティがない。この行き違いが面白い。ある閉鎖されたコミュニティに入り込む一人の異邦人。そして、この異邦人は必然的にそのコミュニティを混乱させてしまうのです。

ただ一方でこういった都市対地方という構図(都市と言い切ってよいかはちょっと微妙ですが、少なくとも測量の技術が発達しているところは、それなりに開拓され、人が多く住むところだと思います)として捉えるのではなく、もしかすると都市と地方の間に、ある種の通路を開通させる、その役割を担っているのが、まさに「測量士」としての役割だと考えることはできないか、そんなことも思ってしまいます。(その点で、Kはこの村の女性と変な意味ではなく、妙に通じるところがある)

コミュニティの閉鎖性に紛れ込む一人の異邦人という構図が、前回のエントリーで取り上げた安部公房『砂の女』に共通するところがあるように思います。偶然ですが。

気になったところがもう一点あるので、それはまた明日(時間があったら)。
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『砂の女』 安部公房

砂の女
砂の女
安部 公房

カフカの『城』が一向に終わらないので、とりあえず前に読んだ本について書いておこうと思います。

安部公房の『砂の女』です。

安部公房といえば『壁』や『箱男』なども面白いですが、個人的には『砂の女』が一番読みやすく、かつとても面白く感じました。

『砂の女』は昆虫採集に出かけた男が砂穴の底にある家に閉じ込められるお話です。そこには一人の女性が住んでいます。男は四苦八苦するのですが、どうしても逃げられない。

だけど不思議なのは、とても劣悪な環境なのに、そこに女性が住み続けていることです。その劣悪さはこの男性の視点から語られることによって浮き彫りになっていきます。

そのような環境でありながらも、女性はずっとそこに住んでいるのです。これがどことなく広い意味での愛みたいなものを感じてしまいます。ここでは郷土愛といっていいのかもしれませんが、こういうものはとても多い。様々な不都合があるのだけれども、一方でそこには相互補助的な仕組みがある。

なんか僕はヒンドゥー教のカーストを想像してしまいました。ちらっと本で読んだことなのですが、カーストも特に下位にいれば職業的な束縛もあるし、それ故経済的な問題も多々あると。それならばヒンドゥー教をやめちゃえばいいじゃないか、現にシク教徒(ターバンの人たち)はそのような束縛がないので力があればいくらでも成り上がれる(らしい)、じゃあなんでやめないのだ、その答えが、カーストそのものが一つのコミュニティであって、コミュニティ内での相互補助的な作用があるという一側面があるかららしいです。

不都合な点が見えながらもそこに居座るという点では、人間の愛に似通っているような気もします。
―罪がなければ、逃げるたのしみもない―

こういう言葉が物語の冒頭にありますが、これもまた一つの見方としては物語全体をあらわしているのかもしれません。しかし、個人的にはこのような人間の心理というよりは、より大きなコミュニティ内で共有されている感情のようなものが気になる作品でした。
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